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2020年1月3日
​出血性ショックと子宮体癌の疑いで緊急入院し、輸血1200ミリリットルを受けました。

「この出血で癌の疑いじゃ、もう末期だ」と思いながら執筆した短編です。

私を助けてくれた血を献血してくれた人 格闘家編


彼は世界を飛び回る空手の達人。

世界には、まだまだ強い敵がいる。
この人生の目的は、自らを律し、心技体を極めつくすこと。

そのため、定期的な血液検査の意味も込めて献血している。


採血結果は良好。
​予定通り400ミリリットル献血をするべく、椅子に座る。

差し出した腕は、見事な上腕二頭筋を携え、針を刺す看護師も思わず見惚れるほどだった。


ふと、目の前のテレビ画面に視線を移す。

芸能人が薬物で捕まったニュースを、ワイドショーが延々と伝え続ける。


「薬物か...。」

今まで、何度か薬物に溺れる人を見て来た。


彼らは快楽を求めるというよりも、寂しさを忘れる手段として、薬物から抜け出せなくなっていた。


もし、人間に寂しさという感情がなかったら、薬物は廃れるだろう。


ただ、寂しさという感情を失くした人間は、誰かを愛し求める気持ちをも失うだろう。

寂しさを感じるから、人は誰かを愛するのだ。



ふと、遠い異国の恋人に思いを馳せた。

いや、もうこの世にはいない。
異国に住んでいた彼女は、肉体を失い、今はいつもそばにいる様に感じた。


触れることが出来ないことは悲しいことだ。

でも、その存在は、彼女が生きた事実は自分の中にあり、消えることはない。


彼は寂しくはなかった。


1人という「孤独」はある。
しかし、それは「寂しさ」とは違う。

「寂しさ」には軸がないから。
その感情は、例え誰かと暮らしていても感じることがある。


「孤独」は違う。
そこには、自らを真っすぐ見つめ、知ったものの強さがある。



彼女のお陰で「寂しさ」を「孤独」へと変えることが出来た。


大事なことは全て彼女が教えてくれた。
優しさも、厳しさも、そして愛しさも。


だから、これからもこの「孤独」を相棒に、闘い続けることが出来るだろう。


​それはなんて偉大な贈り物だろう。







 

​私を助けてくれた血を献血してくれた人 格闘家編 その2


「貴方のことを愛しく思う気持ちが、生への執着になってはいけない。

 それは感謝ではなくなるから。

 だって、そうでしょ?
 執着には、笑顔が伴わないもの。」

そう言って、彼女は笑っていた。
思えばあの頃、相当身体も辛かったはずなのに。


どうしてそんなに強くなれるのか、聞いたことがあった。

「それは、貴方のお陰よ。

 私が私の人生に心残りがないのは、心から大事に思う貴方に出会えたから。

 
 心残りがあるとすれば、貴方を遺していくこと...。


 だからお願い。

 私にもしものことがあっても、どうか悲しみ過ぎないで。

 
 私は本当に幸せだった。

 可哀想だなんて、決して思わないで欲しいの。

 
 そうすれば、貴方が思い出してくれた時、

 私はきっと、ずっと笑顔でいられるから。」



彼女はいつも笑っていた。

それは、彼女の誇りだったのだと今はわかる。


だから、いつ思い出しても、彼女は微笑んでいる。

そんな風に彼女を愛したこと、今も変わらず愛していることは、

今度は自分自身の誇りになっている。


​何よりの強さになっている。

 

ちなみに、その時の緊急入院は5日間。

疑われた癌検査の結果は、異常なし。
退院した翌日、阪大病院で再度受診するも、異常なしでした。

​輸血を1200ミリリットル(400ミリリットル献血3人分)を頂いた後、ずっと低体温だった平熱が1℃上がるという効能!?もあり、免疫力が増して、元気に暮らしています。

この短編物語は、他にも「霊能者編」「音楽家編」があります。
400ミリリットル3人分と想定して執筆しました。

​他のものも読んでみたいとのご希望、大歓迎です(笑)

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